ビートルズ『アビイ・ロード』6曲紹介と歌詞和訳【A面】

ビートルズのラストアルバム『アビイ・ロード』(Abbey Road)が50周年を迎え、先週イギリスの音楽チャートで49年252日ぶりに週間売り上げの首位奪還を成し遂げました。

そこで今回は前半として『アビイ・ロード』のA面に収録されている6曲の歌詞の一部を紹介します。

 右から先頭にジョン・レノン、リンゴ・スター、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスンの順番

 ビートルズのアルバム『アビイ・ロード』とは

『アビイ・ロード』は1969年7月1日からアルバム制作が正式に始まり、8月25日に録音が終了し、9月26日に発売されました。

この時代のアナログ盤レコードはA面とB面があり、A面が終わったらB面にひっくり返す必要があります。

『アビイ・ロード』はB面の、特にメドレーになっている部分の評価が非常に高く、ポール・マッカートニーもリンゴ・スターも「B面のメドレーは最高傑作」と発言しています。

ジョン・レノンは「B面のメドレーはガラクタを集めただけ」と発言していて、A面の方が気に入っていたそうです。

ちなみに世界一有名になった横断歩道、アビイ・ロードでのジャケット撮影は1969年8月8 日に行われたものです。今年の8月8日にはビートルズファンがこの場所に集結し、50周年を祝福しました。

この横断歩道はビートルズがレコーディングをした、『ロンドン・EMIスタジオ』 の前にあります。スタジオの前の通りの名にちなんで、アルバムを『アビイ・ロード』と名付けて以来、このスタジオは『アビイ・ロード・スタジオ』と呼ばれるようになり、その後正式に改名されました。

ビートルズ『アビイ・ロード』 6曲紹介と英語和訳【A面】

①Come Together(カム・トゥゲザー)

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『アビイ・ロード』の1曲目はジョン・レノン作曲でリード・ボーカルの『Come Together』

アメリカ合衆国カリフォルニア州知事選挙にティモシー・リアリーが出馬した際の応援ソングとしてつくられたもの。ティモシー・リアリーは、「ドラッグの教祖」とも言われていて、選挙運動中にマリファナ所持により逮捕されていて活動は中止されています。

この曲はビートルズのメンバー4人のことを皮肉った歌詞になっています。しかしジョンのつくった歌詞は言葉あそびのように並べられていて、意味を理解することも、日本語に訳すことも難解であるとされています。

1976年のアナログ盤『アビイ・ロード』の歌詞カードには「対訳不可能」と記載されたほど。今でも様々な和訳があり歌詞の意味の憶測をしていますが、真意を知るのは歌詞をつくった本人、ジョン・レノンだけでしょう。

タイトルの『Come Togeter』の基本的な意味は「団結する」「協力する」「一体となる」です。

ジョンが自分自身について書いた3番の歌詞がこちらです。

He bad production

He got walrus gumboot

He got Ono sideboard

He one spinal cracker

He got feet down below his knees

Hold you in his armchair

You can feel his disease

Come together, right now

Over me

( 彼はダメな制作者、セイウチのゴム長靴を履き、オノ(ヨーコ)の食器棚を手に入れ、背骨をケガさせた、彼は謝ることはなかった、彼の肘掛け椅子を抱けば、君は彼の苦しみを感じられる、一緒になろう、今すぐ、俺の上で)

walrus:セイウチ

sideboad:食器棚

spinal:背骨の 脊柱の

armchair:肘掛け椅子

below:下に 

※ジョンはオノヨーコと「バギズム」という活動を行っていました。2人のPR会社の名がバギズムに由来する “Bag Productions Ltd” で、この言葉と掛け合わせているものだと思われます。歌詞は “bag production” となっているものも見られます。

※なぜセイウチが出てきたのかは、”I Am The Walrus” というビートルズの曲があり、この曲が使われた映画でジョンがセイウチの恰好をして演奏をしていることからです。

※”sideboard” には裁判用語で “private discussion”(個人的な話し合い)を取る意味もあり、オノ・ヨーコがビートルズのメンバーから悪影響と思われていることについてメンバーが話し合ったとの解釈もあります。

※背中については、ジョンは1969年7月2日に車の事故を起こしていて、オノ・ヨーコに怪我を負わせたことを書いていると思われます。他に “spinal cracker” がジョンの悪い態度のことを指してるという解釈もあります。

※”He got feet down below his knees” は直訳で「彼のひざの下に足を降ろした」ということは「ひざまずかない」という意味で、他のメンバーたちに謝ったことはない、もしくは膝をついて意気消沈することはないとの見方もあります。

(正しい解釈かは不明です。)

②Something(サムシング)

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ジョージ・ハリソン作詞作曲、ボーカルも担当した曲で美しいラブソングです。

ビートルズの曲の中で「イエスタデイ」の次に多くカバーされた曲と言われ、ジョージの最高傑作となります。

Something in the way she moves

Attracts me like no other lover

Something in the way she woos me

I don’t want to leave and now

You know I believe and how

彼女の仕草の何かが

他の女の子にはないくらい僕を惹きつける

彼女が僕に甘えてくる仕草の何かが

もう彼女を離したくない

僕がどれだけ信じているか、分かるだろう

woo:懇願する せがむ

Attract:惹きつける 魅了する

③Maxwell’s Silver Hammer(マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー)

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ポール・マッカートニーの作品でボーカルも担当しています。

曲調は軽快でさわやかですが、歌詞の内容はマックスウェル・エディスンという医学生がハンマーで殺人を犯し、最後には裁判長も殺害するという衝撃的な内容。

ポールはこの曲のシングル化を希望していて、何度もレコーディングを重ねたそうです。しかしポール以外のメンバーは、度重なるレコーディングにうんざりで、この曲を良く思っていなかったよう。

歌詞は韻を踏んでいて、言葉遊びのようにもなっています。

Bang, Bang,

Maxwell’s silver hammer

Come down upon her head 

Bang, Bang,

Maxwell’s silver hammer 

Made sure that she was dead

バン バン

マックスウェルの銀のハンマーが

彼女の頭に振り下ろされた

バン バン

マクスウェルの銀のハンマーが

彼女が死んだことを確かめた

come down:下がる 降りる

make sure that ~:(~ということを)確かめる

④Oh! Darling(オー!ダーリン)

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ポール・マッカートニーの作品です。ポールは喉が潰れるのを覚悟して、納得のいくまでレコーディングを続けたそうです。

ジョン・レノンもお気に入りの曲として挙げていて「ポールより、どちらかというと僕スタイルの曲だ」ともコメントしています。

Oh! Darling,

please believe me

I’ll never do you no harm

Believe me when I tell you

I’ll never do you no harm

オー!ダーリン

信じてくれよ

決して君を傷つけない

僕の言うことを信じてくれ

決して君を傷つけない

“I’ll never do you no harm” は二重否定になっていますが、否定の強調で「決して傷つけない」の意味となります。黒人英語(African American vernacular English)で使われている用法です。

⑤Octopus’s Garden(オクトパス・ガーデン)

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数少ないリンゴ・スターの作品。作曲はジョージ・ハリスンも多く手伝っています。

リンゴがイタリアに行って友人と船に乗った時に、昼食にタコを船長が出してくれて、タコについていろいろ教えてくれたことが、この歌詞のアイディアになっているそうです。

この頃ビートルズは全員が揃ってレコーディングすることが少なくなっていましたが、この曲はメンバー全員が演奏に参加している貴重な作品です。

I’d like to be under the sea

In an octopus’s garden in the shade

He’d let us in, knows where we’ve been

In his octopus’s garden in the shade

海の底に行きたいんだ

ひっそりとしたタコの庭に

彼は僕たちを入れてくれるだろう、

僕たちがどこにいたかを分かって

ひっそりとしたタコの庭に 

in the shade:日陰に 木陰に 目立たない

⑥I want you (She’s So Heavy) (アイ・ウォント・ユー)

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ジョン・レノンが作詞、作曲、ボーカルを担当しています。オノ・ヨーコに捧げた曲で、ビートルズの公式発表曲の中でも一番長い7分44秒の曲です。

歌詞は “I want you” をただ繰り返したもので、発表当時は非難も多かったのですが、ジョンは「I want you こそが一番大事な言葉なんだ。」と語っています。

ラストはジョンのモーグ・シンセサイザーによる演奏が延々と続き、突然止まって終わります。実際は8分4秒まであったものを、ミックスを聴いていたジョンが「そこで切れ!」と叫び、レコーディングエンジニアが7分44秒の時にテープを切ってこのような形になったそうです。

I want you

I want you so bad

I want you

I want you so bad

It’s driving me mad

君が欲しいんだ

君がすごく欲しいんだ

君が欲しいんだ

君がすごく欲しいんだ

僕を狂わせる

“I want you so bad”の “so bad” は副詞の “badly”(とても、ひどく)の意味と同じで、強調として使われています。

drive me ~:私を~(の状態に)させる

他に良く使われるのが “It drives me crazy.” (私を狂わせる)で、恋愛の場面で言えば「夢中になってる」という意味ですが、状況によっては「イライラしている」という悪い意味にもなります。 It drives me nuts.(イライラさせる)もよく使われます。

最後に

ビートルズのアルバム『アビイ・ロード』のA面の曲と歌詞の一部を紹介しました。何気なく聴いていた曲の英語歌詞を調べてみると、「こんなこと書いてたんだ!」と驚かされることが多々ありますよね。特に今回の中の、『Come togeter』『Maxwell’s ~』は少し衝撃が強すぎました。

歌詞の意味を知ると、良くも悪くも自分の持つ曲のイメージが変わってきます。今まで自分が好きだった洋楽の歌詞も確認してみると、おもしろいかもしれませんね。