映画の話題は、世界共通で盛り上がれますよね。でも英語のタイトルが分からないと話しが始まりません。内容を伝えて分かってもらうのも大変ですよね。
特に自分のお気に入りの映画や話題の映画は、原題も一緒に覚えておくことをおすすめします。
今回は実話に基づく映画から、原題と邦題が違う映画を9つ選んでみました。
映画の内容の大まかな紹介と、タイトルから英語も学べるように解説しています。
ぜひ参考になさってください。
もくじ
原題と邦題が違う実話に基づく映画9選
最強のふたり

原題: Intouchables
英題:The Intouchables
2011年フランス映画
パリに住む富豪のフィリップは過去の事故による頸椎損傷で、首から下の感覚がなく、体は動かせません。住み込みの新しい介護人を雇うため、面接を行うことに。
その面接にやってきたドリス。実は彼は職に就く気はなく、職を探しているふりをして失業保険をもらおうとしているだけでした。ところがフィリップは他に面接にきた候補者は気に入らず、ドリスを雇うことにします。
フィリップとドリスにはモデルとなる人物がいて、実話に基づいたストーリーです。
実際と異なる点はいくつかあって、ドリスは映画では黒人でしたが、実際はアルジェリア出身の青年で、10年間にわたりフィリップの面倒を見ていたそうです。
原題はフランス語ですが、「触れてはならない」「触れることはできない」という意味。本来なら出会うことのない全く違う境遇の2人からつけられたタイトルとなっているのでしょう。
英題も原題と同じにしていますが、この言葉を英語にすると “untouchables” となります。
フランス語の発音では「アントゥシャブレ」英語では「アンタッチャブルズ」のような感じになります。
少し長いので覚えづらいなと思ったら語源を考えてみると覚えやすいです。
un=…がない、でない、…と反対 touch=触る able=できる
つまり、「触ることができる」の反対で「触ることができない」となります。un がつく言葉は日本語でもおなじみの “unlucky” や “unhappy” などもあるので理解しやすいですね。
人生の動かし方

原題:The Upside
2017年アメリカ
「最強のふたり」から6年後、アメリカがリメイクをしました。
フィリップ役に、映画「アルゴ」、ドラマ「ブレイキング・バッド」のブライアン・クランストン、フィリップの介護人となるデル役には、俳優でコメディアンのケヴィン・ハート、フィリップの秘書役にニコール・キッドマンが演じています。
主な内容は『最強のふたり』とほぼ同じですが、人物設定や細かな内容に多少違いがあります。実際に違いを見て比べてみるのも面白いかもしれませんね。
原題の “upside” の意味は「上側」や「(悪い状況の中の)良い面(点)」です。逆の意味では “downside” で「下側」「(良い状況の中の)悪い面(点)」となります。
“upside” を使ったイディオムで “upside down” は「逆さま」の意味です。
There are upsides and downsides.(良い点も悪い点もある)
You’re holding the chopsticks upside down.(君は箸を逆さまに持っているよ)
大統領の料理人

原題:Les Saveurs du Palais
英題:Haute Cuisine
2012年フランス映画
フランス大統領官邸のエリゼ宮殿に初の女性料理人として仕えたダニエル・デルプシュをモデルとしてつくられた映画です。
ダニエル・デルプシュは2年間フランソワ・ミッテラン大統領に専属料理人として2年間仕えた女性です。
フランスの田舎町で小さなレストランを経営していたオルタンス・ラボリは突然ミッテラン大統領の専属料理人に抜擢。男社会の厨房にひとり孤立するオルタンスですが、素朴な家庭料理を愛するミッテラン大統領からは料理を気に入ってもらいます。
しかし大統領の健康管理や経費削減により、自由に料理をつくることが難しくなってしまいます。
原題の 『Les saveurs du Palais』 (レ・サヴォー・ドゥ・パレ)は「宮殿の味」という意味。
英題の “Haute Cuisine” (オゥト・キュイジーヌ)はフランス語ですが英語でも使われている言葉で「高級料理」の意味です。英語圏でも「高級(フランス)料理」のことを意味しています。
英語で「高級料理」は “expensive dish” や “fancy dish” とも言えます。
My wife and I enjoyed haute cuisine for her birthday.(僕と妻は彼女の誕生日に高級料理を楽しんだ)
大統領の執事の涙

原題:The Butler
2013年アメリカ映画
アフリカ系アメリカ人であるホワイトハウスの執事セシル・ゲインズの視点から34年間のアメリカの歴史が見られます。実在した黒人執事の人生をモデルにした映画です。
奴隷の子供として育ったセシルは、ホテルのボーイとなり、ついには大統領執事に抜擢されます。任期中はアイゼンハワー、ニクソン、ケネディ、レーガン大統領など、7人の大統領に仕えることとなります。
キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争などのアメリカの激動の時代を生きながら、人種差別問題や家族との問題も大きく揺れ動く。
執事を引退して歳をとったセシルは、ある人物に会いにホワイトハウスへ再び足を踏み入れます。
この映画の監督 Lee Daniels(リー・ダニエルズ)の他の作品にはニューヨークのハーレムに住む少女の物語を描いた『プレシャス』があります。
“butler” (バトラー)は英語で「執事」の意味です。古代フランス語 で “bouteillier” 「(宮廷の)ワインなどの酒を管理をする召使の長」からきた言葉です。
He served as a butler at the White House for 34 years. (彼は34年間ホワイトハウスで執事として務めた。)
それでも夜は明ける

原題:12 Years a Slave
2013年イギリス・アメリカ
1841年にワシントンD.C.で誘拐され、奴隷として売られたソロモン・ノーサップの “Twelve Years a Slave”(奴隷体験記)が原作となった映画です。
ソロモン・ノーサップはニューヨークに住むヴァイオリニストの “自由黒人” で、妻と子供2人と順風満帆な生活を送っていました。ある日ノーサップは2人の男から周遊公演の誘いを受けます。しかしある晩、その男たちに薬漬けにされ、昏睡したまま奴隷商に売られてしまうのです。それから解放されるまでの12年間、ノーサップは奴隷として生きることとなります。
目を背けたくなるシーンが多い映画ですが、実際に行われていたことです。
“slave” が「奴隷」の意味。由来は、中世のラテン語 Sclavus(スラブ人)、中世にスラブ人が奴隷にされたことからきています。英語でスラブ人の書き方は “Slav” です。
「奴隷」という意味の “slave” の英語の発音は「スレイヴ」です。
スラヴ人については wikipedia をご参照ください。
↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/スラヴ人
博士と彼女のセオリー

原題:The Theory of Everything
2014年イギリス
理論物理学者のスティーブン・ホーキング博士と元妻のジェーン・ホーキングとの学生時代の出会いから結婚、病気に立ち向かい苦悩しながらも懸命に生き、2人が別れるまでを主に描いた伝記映画です。原作はホーキング博士の元妻ジェーンによる自伝『Travelling to Infinity : My Life with Stephen』です。
ケンブリッジ大学で物理学を学んでいるスティーブン・ホーキングは同じ大学に通うジェーン・ワイルドと恋に落ち、付き合うように。しかしホーキングは、徐々に体が自分の思うように動かなくなることを感じています。そしてついにある日、何もない道で異常な倒れ方をし、病院へ運ばれるのです。医者からの診断結果は ALS(筋萎縮性側索硬化症)で余命2年と宣告されます。
原題の『The Theory of Everything』は物理学用語で、自然界の4つの力(電磁気力・弱い力・強い力・重力)の統一を目指す理論のことです。日本語では「万物の理論」と訳されています。
タイトルは物理学用語を由来につけられていますが、映画自体は物理学的なことが中心の映画ではありません。病気になっても研究し続けるホーキング博士と同じく、妻ジェーンも博士を懸命に支えます。
このタイトルはそんな2人の生き方も込められているのではないかと考えます。映画の最後に2人でつくったものを一緒に見るシーンがあります。
ハドソン川の奇跡

原題:Sully
2016年アメリカ
2009年に起こった「USエアウェイズ1549便不時着水事故」は乗客155人全員が無事に生還した航空機事故。
通称、”Miracle on the Hudson”(ハドソン川の奇跡) とも呼ばれています。
その事故とその後の知られざる機長の苦悩をクリント・イーストウッド監督が、主演にトム・ハンクスを起用し映画化。
2009年1月15日、USエアウェイズ1549便がニューヨーク・マンハッタンの上空を飛行中、バードストライクにより全エンジンが停止してしまいます。
機長であるチェズレイ・サレンバーガーは苦渋の決断の末、ハドソン川に機体を不時着させることに。奇跡的に犠牲者は1人も出ることはなく、「ハドソン川の奇跡」として全世界に報道されます。
機長は国民的英雄となりますが、一方、「本当に適切な判断だったのか」「左エンジンは本当は動いていたのでは」という疑惑をかけられてしまいます。
国家運輸安全委員会(NTSB)による調査が始まり、事故の後自宅に戻れない状態となってしまうのです。
邦題『ハドソン川の奇跡』(Miracle on the Hudson)は、事故の後に当時のニューヨーク州知事が言って広まった言葉です。
原題の “Sully” は機長チェズレイ・サレンバーガーのニックネームです。
映画は事故そのものよりも、サリー機長に焦点をあてたものとしてつくられているので、機長のニックネームをタイトルにしたのだと考えられます。
原題のままでは日本人には分かりにくいため、タイトルを変えたのでしょう。
ただ、タイトルからのイメージで事故の詳細についての映画だと思って観ると、ギャップが生じてしまうかもしれません。
映画ではサリー機長はまるで容疑者のように扱われていますが、実際の事故後はそんなことはなく国民的英雄となり、オバマ大統領から晩さん会に招待までされているそうです。
幸せのちから

原題:The Pursuit of Happyness
2006年アメリカ
事業の失敗でホームレスになるまで落ちぶれ、最終的に成功を掴んだ実在の人物、クリス・ガードナーの半生を描いた作品。
ウィル・スミス主演、息子役にはウィル・スミスの実の息子ジェイデン・スミスが演じたことでも話題となりました。
1981年サンフランシスコ、主人公クリス・ガードナーは妻リンダと息子のクリストファーと暮らすセールスマン。ひと儲けしようと、骨密度を測定する機械を売るために大金をはたいて仕入れます。
しかし、病院関係者にとっては「レントゲンより少し鮮明に見える程度で高価なぜいたく品」なだけで、特別に素晴らしいものではありませんでした。
商品は全く売れず、家賃や税金を払うことも難しくなってしまいます。
妻のパートでなんとか生活するのですが、やがて貧しい生活に耐えきれず、妻は息子を連れて出て行ってしまいます。
一方、クリスは証券会社の正社員を目指し、養成コースを受講することに。
原題はアメリカ独立宣言の一説にある “The pursuit of happiness” (幸福の追求)からとってつけられたものです。タイトルが “Happyness” となっているのは、息子の落書きのスペルの間違いをそのまま使用しました。
“pursuit” は名詞、「追求」「追跡」の意味で、動詞は “pursue” 「追い求める」「追跡する」になります。
He always pursued his goals.(彼は常に目標を追い求めた)
The police pursued the robber.(警察は泥棒を追いかけた)
ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

原題:Darkest Hour
2017年イギリス/アメリカ
ゲイリー・オールドマンがイギリスの政治家ウィンストン・チャーチルを演じている歴史ドラマです。
この映画で、第90回アカデミー賞でゲイリー・オールドマンが主演男優賞を受賞し、日本人では初となるメイクアップ&ヘアスタイリング賞を辻一弘さんが受賞したことでも話題となりました。
第二次世界大戦初期の1940年5月、首相に就任したウィンストン・チャーチル。
「戦うことをあきらめ、ヒトラーと平和交渉を開始するのか、闘い続けるのか」の選択にチャーチルの出した答えは。
原題は直訳で『最も暗い時間』です。邦題を見るとウィンストン・チャーチルの伝記を思わせるかもしれませんが、実際はチャーチルが大きな決断をくだすまでの4週間を描き、その時間と決断に焦点をあてた映画です。
The darkest hour is just before dawn. (夜明け前が一番暗い)
つらいことの後には必ずいいことが起こるという意味のことわざです。
最後に
映画のタイトルは日本人に分かりやすいように変えられますが、それによって映画の内容とのギャップが生まれてしまうこともあると思います。
原題にはシンプルでも深い意味が込められているものが多いので、実際に映画を観る時は、原題も確認して意味を理解してから観るといいかもしれませんね。